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AI活用戦略

プロンプトとは何か。ChatGPTの登場から、AIへの頼み方はどう変わったのか

プロンプトの基本から、GPT-3の見本提示、ChatGPTの対話、役割・見本・作業分解、個人化と推論モデル、調査・エージェント機能までを、会議メモの例と利用者の視点でたどる。

依頼・背景、材料・完成形。プロンプトの基本

記事本文

ChatGPTにメールを書いてもらったものの、丁寧すぎて自分の文章に見えない。会議のメモを要約してもらうと、読みやすくはなったけれど、上司へ伝えたかったことが抜けている。そんなとき、どこを直せばよいのでしょうか。 「もっと具体的に指示するとよい」と聞いて条件を足しても、今度は文章が長くなるばかり。便利なプロンプトを見つけてコピーしても、自分の仕事では思ったように使えない。そんな経験もあるのではないでしょうか。 ここで知っておきたいのが、プロンプトの役割です。AIに何を頼み、どんな材料を渡し、何をもってよい結果とするのか。その伝え方が分かれば、出力がずれたときにも、どこを直せばよいか見当を付けやすくなるでしょう。 そして、この頼み方はAIの進歩とともに変わってきました。文章の続きを作るモデルに見本を渡していた頃から、会話で条件を詰め、資料を読ませ、調査まで依頼する現在へ。使える機能が増えるにつれて、人が伝える内容や、毎回説明する必要のあることも変わってきました。 この記事では、まずプロンプトそのものを押さえてから、OpenAIの初期モデルから現在までをたどっていきましょう。モデルの名前を覚えるよりも、「その時期のAIに何を頼めるようになり、利用者は何を工夫するのか」に目を向けてみてください。

そもそもプロンプトとは、AIに渡すどんな情報なのか

プロンプトは、AIへの質問や指示などの入力を指します。「この言葉の意味を教えて」も、「この文章を短くして」もプロンプトです。長い命令文や、決まった書式である必要はありません。

「まとめて」に、用途と読み手を加える

ただ、仕事に使う依頼では、やってほしい作業だけを伝えても、期待する答えが返るとは限りません。たとえば、次の二つを比べてみましょう。

この会議メモをまとめて。 この会議メモを、会議に出ていない上司への報告用にまとめて。決まったことと、判断を求めたいことを分けて、1分程度で読める長さにして。 後の例では、作業に加えて、用途、読み手、重要な内容、長さを伝えています。同じ「まとめる」でも、議事録を残すのか、上司に判断してもらうのかで、必要な情報の選び方が変わるからです。

依頼を整理する四つの要素

依頼を考える際には、次の四つに分けて整理してみてください。

要素 伝える内容 会議メモの例
依頼 何をしてほしいか 報告文にまとめる
背景 何のために、誰が使うか 会議に出ていない上司が読む
材料 何を基に答えるか 実際の会議メモ
完成形 どんな結果がほしいか 決定事項と相談事項を分けた短い文書

結果を見て、依頼を少しずつ改善する

これらを伝え、返ってきた文章を読み、足りなかった条件を直していく。この改善の取り組みが、プロンプトエンジニアリングです。OpenAIの実務向けガイドも、背景、具体的な仕事、望む出力を明確にし、結果を見ながら改善する方法を説明しています。実務向けプロンプトガイド 一度で完璧な指示を書く必要はありません。「相談事項が抜けた」「参加者には分かる略語が残っている」と気づいたら、その指摘を次の依頼に生かしてみてください。

ChatGPT以前:GPT-3では、見本を見せて答え方を伝えた

現在のChatGPTにつながる流れを理解するために、少しだけ時間を戻してみましょう。 2020年のGPT-3の研究では、入力に少数の例を置くことで、モデルへ課題や答え方を伝える方法が示されました。会話の中で人間らしい依頼を受ける現在の使い方とは違い、文章の並びを用意して、その続きを生成させる形を想像すると分かりやすいでしょう。GPT-3の研究発表 たとえば、「メモ:日程は未定」「整理:確認事項・日程を決める」という組み合わせを見せ、次のメモも同じ形に整えてもらう。こうした少数の見本を使う方法を、few-shot promptingと呼びます。入力の中で見本を渡すもので、モデルをその場で追加学習させることとは異なります。 この話を、今の利用者に引き寄せるとどうなるでしょうか。「いつもの報告書と同じ感じにしてほしい」ときに、過去の短い見本を添える方法がそれに当たります。望む形を言葉だけで説明しにくければ、実物を見せる。これは今も使える工夫です。

2022年:まず質問し、返事を見ながら頼み直せるようになった

2022年、OpenAIは指示に従いやすく調整したInstructGPTを発表し、同年11月にはChatGPTを公開しました。ChatGPTは、追加の質問を重ねられる対話形式を特徴としていました。InstructGPTの発表、ChatGPTの発表 利用者は、まず普通の言葉で「会議メモをまとめて」と頼み、その返事を見てから調整できるようになりました。

少し長いので、重要な点を三つに絞って。 これは上司への報告なので、未決定のことも残して。 こうしたやり取りは、自分が欲しかったものを確かめる機会にもなるでしょう。最初は「要約がほしい」と思っていても、読んでみると「上司に決めてもらうことを整理したかった」と気づくかもしれません。 プロンプトを考えることは、自分の依頼を整理することにもつながります。会話でうまくいった条件は、次回の最初の依頼に入れておくとよいでしょう。同じ修正を繰り返す手間を減らす工夫です。

2023年前後:役割・見本・手順を使い、欲しい答えを具体化する

仕事で繰り返し使っていると、毎回のやり取りだけでなく、最初の依頼も整えたくなるのではないでしょうか。GPT-4の発表では、AIの文体や担当する仕事を指定する仕組みや、例・段階的な推論を使う方法にも触れられています。GPT-4の発表 ここでよく出てくる工夫を、会議メモの例で見ていきましょう。

役割を伝える:着目してほしい立場を示す

役割を伝えるとは、AIに着目してほしい立場を示すことです。たとえば、「あなたは会議の進行担当です。次回までに必要な準備を整理してください」と頼んでみてください。単に内容を要約する場合とは違う観点を伝えられるでしょう。ただし、肩書きを付けるだけで、知らない事実を正しく補えるわけではありません。

見本を見せる:仕上がりの基準を共有する

見本を見せるとは、仕上がりの基準を共有することです。前回の報告文を添え、「この見出し構成に合わせて」と伝える。長さや語調、項目の並びなど、言葉だけでは伝えにくい部分も示しやすくなるでしょう。

仕事を分ける:複雑な依頼を段階に分ける

仕事を分けるとは、一つの依頼に詰め込んでいた作業を整理することです。たとえば、「まず決定事項を抜き出す。次に未決定事項を整理する。最後に報告文へまとめる」と頼んでみましょう。内容が抜けていたら、どの段階で抜けたのかも確かめてみてください。 三つを毎回すべて使う必要はありません。観点がずれるなら役割を補い、形式が合わないなら見本を足す。複雑な依頼で内容が抜けるなら、作業を分ける。まずは、出力のどこに困っているかに合わせて、一つ選ぶところからで十分です。

2023〜2024年:自分の前提を、毎回一から書かなくてもよくなっていく

同じ用途でAIを使うと、「日本語で簡潔に」「読み手は専門家ではない」といった条件を、毎回書くのが面倒に感じられることもあるでしょう。これは、指示文の書き方だけでなく、前提をどう引き継ぐかという問題です。 OpenAIは2023年にカスタム指示を、2024年にはメモリの試験提供を発表しました。カスタム指示は自分で好みや要望を設定する機能、メモリは会話で伝えた情報を、その後のやり取りに生かすための機能です。カスタム指示の発表、メモリの発表 報告文の例なら、「短い段落で、専門用語を避ける」という普段の好みと、「今回は役員向けで、予算の論点を優先する」という今回だけの条件を分けて考えられます。 ここで押さえておきたいのは、AIが参考にする情報が、その場で入力した一文だけとは限らなくなったことです。会話の履歴や保存された前提が影響する場合もあります。 同じ文を入力したのに、別の会話では答えの調子が違う。そんなときは、言い回しを直す前に、どんな前提が共有されているかも確かめてみてください。改善の手がかりが見つかるかもしれません。

2024年以降:「一歩ずつ考えて」が必要かも、モデルによって変わる

プロンプトの紹介で見かける「一歩ずつ考えてください」は、問題を段階的に扱わせる工夫です。こうした方法にはchain-of-thought promptingという名前がありますが、名前を覚えるより、何を助けるための指示なのかを理解するほうが役立ちます。 2024年に登場したo1-previewは、回答前に時間を使って問題を検討するよう訓練されたモデルでした。現在の推論モデル向けガイドでは、簡潔で直接的な指示を勧め、考え方を逐一指示することが不要な場合や、結果を悪くする場合があると説明しています。o1-previewの発表、推論モデルのガイド 一方、GPT-4.1のガイドでは、段階的な計画を指示する方法が紹介されています。したがって、「昔の工夫はもう全部不要」とは言えません。GPT-4.1のガイド 利用者が持ち帰りたいのは、定型文を足す前に、仕事の目的を明確にすることです。「詳しく考えて」とだけ頼んでいたなら、「決定事項と提案を混同せず、上司が判断できる報告にして」と言い換えてみましょう。求める完成形の違いを伝えやすくなるはずです。 モデルを変えたときには、以前の長い指示をそのまま引き継ぐだけでなく、必要な条件を残した短い版とも比べてみるとよいでしょう。

2025年から現在:質問への答えに加え、調べてまとめる仕事も頼める

会議メモ一つを要約することと、会議で話題になった市場の変化を調べ、関連資料と合わせて報告することでは、必要な作業が違います。後者には、情報を探し、比較し、根拠を確かめる工程も必要です。 2025年に発表されたChatGPTのdeep researchは、複数段階のWeb調査を行い、情報をまとめる機能です。同年のChatGPT agentでは、調査と道具を使う作業を組み合わせる方向が示されました。deep researchの発表、ChatGPT agentの発表 こうした機能を使える環境なら、次のような依頼も考えられるでしょう。

この会議メモで話題になった市場の変化について、直近半年の公式発表を調べてください。会議で出た見方を裏付ける情報と、見直しが必要になる情報を分け、上司への報告案にしてください。根拠のリンクも付けてください。 人が指定しているのは、完成する文章だけではありません。調べる期間、使う情報、比較する観点も含まれています。範囲が曖昧なら、どこまで調べれば今回の依頼に答えたことになるかも、先に決めておきましょう。 この段階では、プロンプトをきれいに書き直すだけで解決できない問題もあります。必要な資料が手元にないなら、まず資料を用意する。比較したい条件が決まっていないなら、その条件から相談する。AIへ渡す情報全体を整えることが、頼み方の一部になります。

今の私たちは、何を身につければよいのか

ここまでの変遷を、利用者の立場から振り返ってみましょう。各時期の方法は、現在も重なって使われています。

節目 利用者が工夫すること 今も使える場面
GPT-3の頃 見本で答え方を伝える 独特の形式をそろえたい
ChatGPTの登場 返事を見て条件を伝え直す 欲しい結果を対話で詰めたい
仕事での繰り返し利用 役割・見本・作業の分け方を整える 毎回の出力のずれを減らしたい
個人化・推論モデルの発展 保存された前提とモデルの特性を考える 同じ定型文が合わない理由を探したい
調査・エージェント機能 目的、資料、調べる範囲、完成条件を渡す 複数の作業をまとめて依頼したい

出力のずれから、直す箇所を選ぶ

たとえば報告文の出来が悪かったとき、「もっとよいプロンプトを探そう」と考える前に、どこがずれたのかを一つ選んでみてください。 読み手に合わないなら、誰が何のために読むかを補う。重要な情報が抜けているなら、参照した資料と残してほしい項目を確かめる。形式だけ違うなら、見本を渡す。修正後は前の出力と見比べて、どの工夫が役に立ったかを確かめてみてください。 現在のOpenAIの実務向けガイドには、依頼文を考えること自体をChatGPTへ相談する方法も紹介されています。やりたいことを普通の言葉で話し、足りない条件を一緒に整理する使い方です。ただし、足りない資料まで文章の工夫で補えるわけではありません。実務向けプロンプトガイド 次にAIへ何かを頼むときは、いつもの依頼に「これは誰が、何のために使うものか」を一文加えてみてください。返ってきた文章がどう変わるかを確かめ、足りなければ材料や完成形を補う。そのやり取りを重ねるうちに、自分の用途に合った頼み方が少しずつ見えてくるはずです。 お読み頂きありがとうございました。 資料確認日:2026年9月7日。指示例は説明用の作例です。各機能の利用可否はプランや設定等により異なります。

西本 政夫Prompthing株式会社 代表取締役・プロンプトエンジニア

生成AIを現場の業務へ組み込み、継続的に改善するための設計・運用ノウハウを発信しています。

執筆・編集:西本 政夫(AIを補助に使用)。調査整理や下書きにAIを補助的に使い、公開前に内容を確認しています。